早稲田松竹で松村北斗の特集!?(違うよ)

昨日から早稲田松竹という、高田馬場にある映画館で『すずめの戸締まり』と『キリエのうた』が2本立てで上映されていますね。名画座と呼ばれているタイプの映画館なので2本立てです。1本の値段で2本観られる。いや、1本の値段より安いです。一般なら1300円です。さらにさらにラストの1本だけなら800円で、大きなスクリーンで映画を観ることができます。

名画座って値段が安いだけじゃなくて、その2本立ての取り合わせや何を上映するかなどにも個性があって面白いのですが、そのあたりに触れつつ、俳優松村北斗の前途を祝したいと思って、これを書いています。

 

12月に今回の上映を知って、ひとりXで盛り上がっていました。

引用ポストでは、あまり盛り上がりが感じられないのが残念ですが、これで結構盛り上がっています。

早稲田松竹松村北斗特集をするのだとしたら、これはちょっとすごいことではないか。少なくとも私としてはすごいことです。私が何十年ものぞいていた界隈、SixTONESとはまったく交わらないと思っていた世界に松村北斗がVIP待遇でやってきた、そんな感じです。

 

劇場のホームページをチェックしたら、どんな劇場かはすぐに分かるのですが、この次の番組のテーマは「マーティン・スコセッシに花束を」です。マーティン・スコセッシ、『タクシードライバー』の監督です。最近ではディカプリオ主演の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を撮りました。その大監督と並ぶ位置に松村北斗が?スタッフに強火のオタクがいるの?と私は盛り上がったわけです。

もちろん落ち着いて考えたら分かるんですけど、『すずめの戸締まり』と『キリエのうた』の共通点は松村北斗だけではないんですよね。物語の根幹に関わる部分がつなっがっている。この2つの作品はどちらも震災で大切な人を失った人たちを描いています。そっちです。早稲田松竹が特集のテーマとして選んだのはそっちです。今回の番組のテーマは「岩井俊二×新海誠 終わらない“あれから”を生きる」です。

さて、今回は2本立てと同時にもう1本、レイトショーの上映があります。かつて早稲田松竹では2本立てのみだったように記憶していますが、いつのまにかレイトショーやモーニングショーも一緒に組まれるようになっていました。今回のその3本目が『異人たちとの夏』。主人公がずいぶんと大人になってから、幼いころに亡くしたはずの両親と出会い、共に過ごしたひと夏の日々が描かれています(未見なので、Wikipediaの知識です)。3本目も残された人の物語です。特集としては別の扱いのようですが、これもまたつながっています。

実は、この番組にはもうひとつ面白い部分があります。『異人たちとの夏』の大林宣彦監督は2020年に亡くなられているのですが、その直前に岩井俊二監督に向けて、多大な期待を込めたメッセージを残しています

ここでは『キリエのうた』の岩井俊二監督自身が残された側として存在し、物語の中だけでなく現実世界のこの番組内にも、去った人と残された人という同じ構図が隠されています。とても面白い番組だと思いました。

 

名画座の番組は、単純に監督縛りや俳優縛りの番組が多いのですが、たまに観た後でないとつながりが分かりづらいような番組もあります。さらに、あまり興味のない作品と自分が観たい作品が2本立てになっている時もあり、ついでに観たことがきっかけで魅力を知り、世界が広がることもあります。なかなか他の映画館では味わえない楽しみ方ができる場所なんです。

もちろん名画座は、そもそもその名のとおり「名画」を上映してくれる場所です。公開時にはまだ子供だったり興味がなかったりで見逃していた作品にひょっこり出会えたりもします。

などなど映画を観る時の選択肢に「名画座」も加えてみてほしいなと思っています(そうしたら、絶滅の日が少し先に延びるかもしれない)。東京なら、新文芸坐が一番有名でしょうか。いろんな取り組みをされています。それに目黒シネマ。キネカ大森だけかな。2本立ての概念が残っているところは、本当にわずかになってしまいました。

 

さて、こんな地味な界隈でまるで特集をされたかのように存在する松村北斗。なかなか得難い存在感の俳優になりましたよね。謎目線で書いていますが。

先日、アニー賞の声優賞へのノミネートもされました。ちなみに前回の受賞者は『マルセル 靴をはいた小さな貝』という作品の主演の方だそうです。過去分かりやすいところでは、2019年に『アナと雪の女王2』のオラフが受賞しています。

さらに『夜明けのすべて』の公開が控えています。彼の得難さ(内向性と美しさと俗っぽさ)(←雑だけどそれを語る能力と時間がないので)がいかんなく発揮された作品ではないかと期待しています。三宅唱監督は今後さらに海外での注目を集めるでしょうし、俳優松村北斗を確実に一歩先へと進ませる作品でしょう。こうやって彼のことを考える時、正直なところ、うれしい気持ちに少しだけ寂しい気持ちも混じります。

とはいえ、ただただ彼の前途に祝福あれと願いつつ、オタクをやっていくしかないですね。ついでに、おそらく彼とほとんどつながりのない内容の文章をここまで読んでくださった方々への祝福も願っています。